以前に比べ株式投資はとても身近になりました。少額で投資できるようになったり、ネット証券で株の売買ができるようになったりするなど投資環境がどんどん改善しています。
その反面、株式投資の世界には「専門用語」が多数存在するため初心者からすればとっつきにくく感じるかもしれません。
株取引の入門書で必ずと言ってよいほど登場するのが「三尊天井」や「逆三尊」という用語です。なぜ登場するのかといえば、相場が転換する際に登場する重要な目安だからです。
今回の記事では三尊天井や逆三尊の意味やだまし、成立した具体例を取り上げて三尊天井や逆三尊のポイントを解説します!
三尊天井・逆三尊とは
三尊天井や逆三尊は相場のトレンドが転換する際に現れる強いサインです。
頻繁に登場するダブルトップやダブルボトムよりも強力なサインですので、売買タイミングを考えるうえで非常に重要です。
両者の意味について詳しく解説します。
三尊天井とは
三尊天井とはどのようなチャートのことなのでしょうか。三尊天井の意味や出現する理由について解説します。
三尊天井の意味
三尊天井(さんぞんてんじょう)は江戸時代の相場師である本間宗久が江戸時代に考案したテクニカル分析の方法である酒田五法の一つです。
米相場を分析する手票の一つとして開発され、現在でもチャート分析の手法の一つとして活用されています。
中央の山が高く、左右の山が低いチャートの形が仏の三尊の見た目に似ていることから名づけられたチャートの形で人の頭と肩の形にも似ていることから、ヘッドアンドショルダーズともいいます。
三尊天井が登場するタイミングは高値圏で相場が推移しているときです。二回目の高値が一回目の高値を超えてくるものの、そのあとに急落します。
その後、二回目の高値越えを目指しますが超えられず下落すると三尊天井の形となります。
3つの山の間にある安値(谷)を結ぶラインをネックラインと呼びますが、3つ目の山が出来た後にネックラインを下回る(下抜けする)と相場が下落局面に転換することが多いため、売りのサインとなります。
高値がほぼ同じ高さのものをトリプルトップといいますが、トリプルトップよりも三尊天井の方が売りのシグナルとして強いと考えられています。
三尊天井が発生する理由
三尊天井は売り圧力が思いのほか強いときに発生します。相場が上昇トレンドを形成している際、一定価格まで上昇すると利益確定の「売り」が発生します。
それにより、上昇が一時的にストップするのは珍しいことではありません。
利益確定の売りを上回る買いがあれば相場は上昇しますが、上昇するたびに売り圧力に負けてしまう状態になると市場は上昇トレンドに懐疑的となり、弱気のトレンドに移行します。
簡単に言えば、株価の上昇に見切りをつけ早めに利益を確定しようという動きが強まりだすのです。3回目の上昇が阻止され、価格がボトムラインを割り込むと売り圧力が一層強くなります。
その結果、相場が上昇トレンドから下降トレンドに変化するのです。
逆三尊とは
逆三尊は「逆」という文字がついていることからわかるように、三尊天井と全く逆の構図です。逆三尊の意味や出現する理由を見てみましょう。
逆三尊の意味
逆三尊も三尊天井と同じくチャート分析の手法の一つです。
チャートの谷が3つあり中央の谷が一番深く、左右の谷がそれよりも浅い形となっています。ヘッドアンドショルダー・ボトムとも呼ばれます。
逆三尊が登場するタイミングは安値圏で相場が推移しているときです。二度目の谷は五度目の谷よりも深くなりますが、三度目の谷は二度目の谷より浅くなると逆三尊の可能性が高まります。
一度目の谷と二度目の谷の間の盛り上がりと二度目の谷と三度目の谷の間の盛り上がりを結んだネックラインを突破(上抜け)すれば、相場が上昇局面に転じる可能性が高まるため、買いのサインとなります。
逆三尊が発生する理由
下落局面の中で買い注文が増えつつある局面で逆三尊が発生します。
下落相場で売り一色である銘柄でも、ある程度まで下落すれば割安感が出てきます。そうなると「買ってもよい」と考える投資家が出始めます。
下落傾向の時に相場が少し上向けば、その段階で利益確定や損切りをする人が現れるかもしれません。強い下落トレンドのときは多少の買い注文だけで相場が上向きになることはありません。
ところが、売りが一巡してもなお買い注文が残っていれば、相場は再び上昇します。
2度目どころか、3度目も上昇する気配が見えると、市場は下落トレンドの弱まりを感じ買い注文の機会と考え始めます。
そして、割安で底値だとみた投資家が一気に買い注文を入れることで相場が上昇トレンドに転じます。
よって、逆三尊が現れたら強い上昇トレンドに転換するシグナルとなるのです。
三尊天井・逆三尊のだましの具体例
三尊天井や逆三尊は強いシグナルであり、誰から見てもわかりやすい形です。
しかし、出現したからといって必ずトレンドが転嫁するわけではありません。
ここでは仮想通貨・為替・株式を例にとり、だましの具体例をいくつか紹介します。
ビットコインの逆三尊のだまし
2023年6月から7月にかけて、ビットコインのチャートはレンジ相場を形成していました。上昇とも下落ともつかないチャートがしばらく続いた後で、7月下旬に相場が一段下落しました。
その後、8月上旬に7月上旬よりも深い谷が形成され、7月10日ごろにネックラインを上抜けする場面が見られ、逆三尊の形となったかに思われました。
しかし、8月中旬になると相場が一転、30,000ドル付近から一気に25,000ドル付近まで急落しました。
このとき、逆三尊と考えて買い注文を入れていた場合、大きな損失を被ったかもしれません。
ユーロドルの三尊天井のだまし
1992年から1993年上半期にかけて、きれいな三尊天井の形が出現しました。
三尊天井出現後も相場の下落傾向が見られたため、1ユーロ=1ドルのパリティ付近まで下落するのではと考えてもおかしくない状況でした。
しかし、1ユーロ=1.1円よりも下落することはなく相場は上昇局面に転換してしまいます。
三尊天井の3つ目の山の後で売り注文を入れていた場合、決済タイミングを失ってしまった可能性もあります。
名村造船所の逆三尊のだまし
名村造船所の株価は2023年9月上旬に直近最高値をつけましたが、それ以後は下落トレンドに転じていました。
下落トレンドは9月いっぱい継続し、10月に入っても止まりませんでした。そして、9月下旬から10月中旬にかけて逆三尊の形が見えてきます。
ここで買い注文を入れていた場合、10月20日前後の大きな下落に巻き込まれて損失を出していた可能性が高いでしょう。
しかも、そこで損切りをしていた場合は11月中旬の急騰を逃してしまいます。
とはいえ、10月20日で損切りをせずホールドするのはかなり勇気がいります。短期トレード中心であれば利益をとれなかったかもしれません。
三尊天井・逆三尊が過去に成立した銘柄
だましが多いとはいえ、三尊天井や逆三尊は強力な指標であることに変わりありません。
ここでも、為替・仮想通貨・株式をとりあげて、三尊天井と逆三尊が成立した事例を紹介します。
イーサリアムの逆三尊の成立例
2023年12月19日前後の、このチャートの直前、イーサリアムは大きく上昇した後下落していました。
見方によっては三尊天井の形になっていたといってもよいでしょう。
しかし、その後相場は下落あるいはレンジ相場の様子となり、方向性を失います。
そのとき、長方形で囲んだ逆三尊の形が出現しました。レンジ相場を脱して上昇トレンドを描く可能性が出てきたため、21日の下落後に買い注文を入れます。
一時的な下落はあったものの21日後半から22日にかけてチャートが上抜けします。
その後は21日のボトムラインを下回っていないため、24日前後に反対決済すれば利益を確定できたでしょう。
ポンド円の三尊天井の成立例
この直前、ポンド円のチャートは円安トレンドに入っているため全体として上昇相場を形成していました。
しかし、長方形で囲んだ23日から29日までの期間は上値が抑えられる展開となり、191.3円のネックラインを超えることができていませんでした。
ややいびつな形ですが、三尊天井に近い形が形成されているのが見て取れます。
このとき、3つ目の山が下った直後の190.4円前後で売り注文を出していると、そのあとの29日正午頃に発生した大きめの下落を捉えることができていました。
上昇相場が一服して方向感を失っているときに、三尊天井の形が出てくると下落する可能性が高いというセオリーどおりの結果となりました。
オリックスの三尊天井の成立例
上に示しているのは2018年3月前後のオリックスのチャートです。
オリックスの株価は4月以来緩やかな上昇トレンドを描いていました。
赤丸の中央(三尊のトップ)でピークを迎えた後、小さな谷を形成して反発する局面がありましたが、それから一気に下落しています。
3つ目のピークが2つ目のピークに及ばないと判断した段階で売り注文を出していれば、その後の下落局面で利益を上げることができました。
通常の三尊天井よりも形がはっきりしていないため、ポジションをとるタイミングは難しかったかもしれません。
三尊天井・逆三尊のポイント
三尊天井や逆三尊はだましがしばしばみられるため、強力なサインであるにもかかわらず正しく見極めるのが難しいチャートパターンです。
どうすれば正しいサインを見分けられるのでしょうか。ここでは3つの見分けるポイントを解説します。
それぞれを順に見ていきましょう!
左肩と右肩の高さを比較する
三尊天井や逆三尊の最初のピークを左肩、中央のあとにくるピークを右肩といいます。
左肩が上がっていて右肩が下がる右肩下がりの三尊天井の場合、上昇圧力が弱まっていることを意味します。
その場合はだましではなく大きな下落の可能性が高まります。
右肩の方が上がっている場合は上昇圧力が残っている可能性があるため、下落しても比較的短期間で上昇に転じるかもしれません。
右肩の取引量が多い場合は「三尊崩れ」の可能性が高まり、一気に高値更新する可能性が出てきます。
左右の方の比較と取引量の比較を行い、右肩下がりであることを確認してからショートでエントリーすると勝算が高まります。
逆三尊の場合は、右肩上がりのときに上昇の可能性が高まります。三尊天井の逆になるので間違えないようにしましょう。
フラクタル構造を理解する
フラクタル構造は「自己相似性」と訳される語句で、図形を分解しても同じ図形が再現されることを意味しています。三尊天井や逆三尊といった形はチャートの中に何度も繰り返し出現します。
大きなスケール(週足や日足など)でヘッドアンドショルダーやダブルボトムの形が現れていれば、より小さなスケール(1時間足・30分足など)でも同じような形が現れます。
自分が見つけた三尊天井や逆三尊を確かめるには、時間軸を変えても同じ形を見つけることで検証できます。
長期足のトレンドに加えて短期足のトレンド転換もチェックすることで関心を持ってトレードできるでしょう。
イベント発生時にはセオリー通りにならないこともある
大きなイベントが発生したり、要人発言などがあったりするとセオリー通りにならないこともあります。
政治イベントや戦争・災害などが引き金となった相場の変動が起きるとチャートの流れが大きく変化してしまいます。
ただ、すべてのイベントが予測不可能というわけではありません。
消費者物価指数やFOMC会合のように日付がはっきりわかるイベントも存在します。
そうしたイベントが近づくと「様子見」となり読みにくい相場になります。
その場合は、チャートのシグナルにこだわらず、一時撤退して様子を見たほうがよいでしょう。
三尊天井・逆三尊に関するまとめ
今回はチャートパターンの一つである三尊天井や逆三尊について解説してきました。
こうしたシグナルはテクニカル分析をする上で必須の知識です。しかし、ただ知っているだけではトレードで利益を上げるのは難しいかもしれません。
株式投資やFXの短期取引で継続して利益を上げたいのであれば、習得した知識をもとに過去のチャートパターンを徹底的に分析してチャートの見方を鍛える必要があります。
投資スクールなどでチャートの読み方を教えてくれることもあれば、書籍やネット上の情報(サイトや動画)で見方を解説しているものもあります。
まずは、それらの基礎知識を習得し、三尊天井・逆三尊のパターンを頭に叩き込みましょう。
そのあとは、ひたすら仮説・検証を繰り返し予測の精度を高めます。FX会社などが用意しているデモトレードを活用すると、自分のお金を使うことなく学習成果を試すことができます。
徹底してチャート分析と実践を繰り返すことで、はじめて三尊天井や逆三尊を使いこなせるようになるでしょう。
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